ZACARI


小学生に通学かばんの自由をZACARIデザイナー 緒方義志

ZACARI(ザカリ)というブランド名は「育ちざかり」の【ざかり】から来ています。

「~ざかり」とは、人や物のいちばん勢いのある時期や状態を表すことばで、とにかく元気を感じさせてくれる言葉です。「ざかり」がつく言葉は他にも、遊びざかり、食べざかり、伸びざかり、やんちゃざかり、働きざかり、花ざかり・・・と、たくさんありますが、小学校に通う頃の子供たちは実にたくさんのザカリを謳歌しています。

そんな元気で育ちざかりな子供たちが、毎日荷物を持って学校に出かけるのが楽しくなるようなかばんを創りたい。この思いがZACARIのかばんづくりの原点です。子供たちが毎日ストレスなく楽しい気分で学校へと出掛けて行けるようなかばんとはどんなものであるべきか。そのことについて考える時、ほぼランドセル一択という選択肢しか子供たちに与えていない我が国の教育文化には、健全な多様性を醸成できていないという意味で社会の努力不足をずっと感じてきました。

私自身、小学3年生の時にランドセルが嫌いで自らそれを放棄した子供だったのですが、そんな数十年も昔の経験と時を超えて向き合い、当時の記憶をたどりながらその時の思いとはどのようなものだったか、子供の頃の率直な気持ちを今になって改めて思い起こしてみると、「ランドセルは堅苦しくて窮屈だし、仰々しいわりには不便だし、何よりみんな同じで押しつけがましい」という思いが強かった気がします。高価な革のランドセルを与えてもらっておいて何とも不敬で生意気な言い様だとは思いますが、私は本当にそれが耐えられずに自分の判断でランドセル通学をやめました。

これはあくまでも小学生の頃の私個人の感覚であり、すべての子供がそうだったとは決して言うつもりはありませんし、むしろそのような違和感を抱く子供は少数派だったかもしれません。しかし、そのような思いでランドセルを捉えていたごく普通の小学生が現実にこうして一人いたということは紛れもない事実です。そして、そのような子供が一人でもいたということは、似たような思いを持つ子供がきっと他にもいたはずですし、世代を超えた今日の小学生にも少なからず存在するはずです。そんな似た者同士の子供たちのために、ランドセルとは異なる別の良き選択肢を提案したいのです。

そもそも、学校の校則で定めがない限りかばん選びは子供と親の自由であり、実際に全国のほとんどの公立小学校はランドセルの使用を児童に義務づけているわけではありません。それにも関わらず100人中ほぼ100人の児童がランドセルを選択するという現実はあまり自然な現象とは考えにくく、社会的な先入観や同調のような心理がある種の不文律として作用している結果だと私は考えています。このように長い年月をかけて形成された社会心理というものは一朝一夕で劇的に変化するということはなかなか考られませんが、冒険的で自由な意志を持った一部の先駆者たちがそれぞれの価値観に見合った新しい様式を思い思いに謳歌しはじめることで、教育現場での画一的側面もきっと少しずつ多様化していくだろうと信じます。そのためにも、小学生の通学かばんにはもっと多様な選択肢がまずはあるべきです。

ランドセルにはランドセルの良さがあることも確かです。しかし、ランドセルという通学かばんが誕生してからもう既に一世紀以上が経っており、その間に世の中のかばんたちは目覚ましい進歩を遂げています。様々な用途に適した新たな素材が誕生し、素材は軽さや耐久性などを追求してさらに高機能化し、かばんの構造や仕組みに対する新たな発想も次々に生まれ、それらを形にする技術も進歩し、色やデザインに対する感性や美意識も多元化しています。

一方で小学校の通学にのみ特化したランドセルというかばんのあり方は実はそんなに大きくは変わっていません。もちろん100年という長い年月の間にランドセルはある一定の進化を遂げてはきたものの、「かぶせのついた革製の箱型背嚢」という基本的な様式は頑なに守り続けてきました。そして、その決まった様式の中でのみ進化しようとしつづけてきた結果、ランドセルとしては諦めざるを得なかった機能や仕掛け、素材や意匠が多々あることも否めない事実です。

しかし、日々の生活スタイルや学校での過ごし方、通学のあり方などが変遷し多様化している今日において、昔ながらの様式美を守ったランドセルだけが通学カバンにおける唯一無二の解であるという我が国の社会通念には、やはりどうしても無理や矛盾を感じます。私たち作り手がもう少し柔らかい頭で子供たちの通学かばんのことを考えれば、もっと多様なスタイルやデザインを提案できるはずであり、社会も同時にそのような通学かばんの新しいスタイルを許容することができるようになるはずです。だからこそ、そろそろこの国の小学生の通学かばんもランドセルというしきたりのような文化にただ固執するのではなく、真の合理性や実用性、デザイン性や心地良さを追求した新しい選択肢を積極的に模索してみるのも良いのではないでしょうか。

「毎日使うものだからこそ、通学かばんは自分の好みやスタイルに合わせて自由に選ぼう。」

そう子供たちに提言するにあたり、自信と責任を持って提案できる新たな選択肢としての通学かばんをZACARIは本気で創りました。子供にとって窮屈で不便で押しつけがましくないかばん。すなわち、「快適」で「便利」で「自由」なかばん。この3つの要素を子供用通学かばんの大切な本質と定義し、そのための使い勝手、機能性、仕掛け、素材、色使い、佇まいを総合的にデザインし、ランドセルにはない新しいアイデアやこだわりをたくさん詰め込みました。その子供らしく元気なデザインとアクティブでカジュアルな使い心地からは、ランドセルとはまったく違う楽しくて軽やかな気分を子供たちに感じ取ってもらえるはずです。

小学生に通学かばん選びの自由を。
ZACARIは新しい時代の子供たちと共に真に快適で自由な通学スタイルを作り上げていきたいと考えています。今までがこうだったからとか皆がこうだからという理由だけで現状をあたりまえと捉え、それが普遍的で未来永劫続いていくべきものと考えるのではなく、もっとこうだったらいいのにという子供たちの思いや感覚と素直に向き合い、彼らがより快適に日々を過ごせるかばんとはどのようなものなのかについて思案し実践していくことこそが私たちの存在意義であると信じて。

緒方義志